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2025年6月7日、
週末の賑やかな夜、「C.S.トワイライト・ホライゾン号」は、
華やかな出航の汽笛とともに、
813名乗客を乗せて
夢のクルージングへと旅立ちました。


日本の初夏らしい、蒸し暑さの残る空には星が瞬き、乗客たちは会話を弾ませ、
船内のラウンジでは優雅な音楽が流れていました。
廊下では散策を楽しむ人々の姿があり、ロビーでは初対面同士のあいさつが交わされ、

旅の始まりを祝うような空気に包まれていました。

 

しかし、その穏やかな時間は長くは続きませんでした。

快晴の予報だった空は徐々に霧が立ち込め、次第に波が不気味にうねりはじめました。

静寂を引き裂くように、空には緑色の雷光が走りました。
 

不気味な咆哮が響きわたり、乗客たちがざわめき始めたそのとき、大きな衝撃で船体が

激しく揺れました。

く光る目、岩のような無数のひれが生えた巨大生物…

 

暗い海を裂いて現れた異形の影が、鈍い水音とともに船体の右舷へと突進し、

鋼鉄の外壁をえぐるようにして通り抜けていったのです。

損傷は大きく、船は急速に傾き、冷たい海水が容赦なく船内へと押し寄せます。
生き残った者たちは救命艇に、あるいは流れ出た家具にしがみつきながら、

荒れ狂う波の上をさまようこととなったのです。

やがて霧が濃くなり、遠くにかすかな明かりが見えました。


異国情緒あふれる港町の一角は、どこか幻想的な空気が漂っていました。

 

遭難した乗客たちは、冷えた体を引きずるようにして、ふらつく足取りで陸へ上がりました。

そんな人々の前に、ひとりの男が現れました。


「こんな時間に、ぞろぞろと……あんたら、どこから流れてきたんだ?」

けだるげな口調ながらも、男はランタンの灯をこちらに向けて足元を照らしてくれました。
 

「いったいここは……?」
 

「ここはポルトゥーラさ。アストラヴェールの小さな港町だよ


男がそう告げた瞬間、あたりに静かなざわめきが広がりました。

誰の顔にも共通して浮かんでいたのは、聞き慣れない響きへの戸惑いでした。

赤い目の怪物を見た」「緑の雷が鳴っていた」
乗客たちが口々に語ると、ピタリと足を止め、目を見開き、こう言いました。

「……それ、ガント種だな。西の方で、たまに出るって話だ。
 ……運が悪かったな。生きてるだけ、奇跡だぜ」

 

言葉の意味をつかめずにざわつく人々の様子を一通り見渡し、男は静かに言葉を継いでくれました。

親切にも事情を説明してくれた男によれば、このような経緯で異世界から流れ着いた者は、

【訪問者】と呼ばれ、身につけていた衣服や時計などは漂流物】として、この世界では非常に高く売れるそうです。

我々はいま、どこにいるのでしょうか。

元の世界に、帰る道は残されているのでしょうか。

混乱と不安のなか、乗客たちは顔を見合わせ、お互いの荷物を確認し合いながら、
これからどうするかを静かに語りはじめました。

遠くから聞こえる賑やかな音色が、
これから始まる新しい物語を歓迎しているようでした。

HakaStLaurent

VRイベンター / マルチクリエイター

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VRイベントの企画・運営・進行を手がける実力派イベンター。

400名規模の会員制コミュニティを主宰や、年間3000人以上を動員するイベントを開催。
没入型VRアトラクション「絶対に沈没する豪華客船」をはじめ、エレガントなテーマを軸にしつつ、ジャンルを超えた多彩な企画にも挑戦している。

講義型イベントでは、「VR文化の国ごとの違い」や「人気イベント形式の分析」など、実体験に基づいた知見を提供。世界最大のVRイベントであるVketでのステージ登壇や影響力のあるVTuberとのコラボ経験など、様々な分野との橋渡し役としても活躍している。また、「大人のための初心者案内」などを通じ、初心者から上級者まで幅広くサポート。ゲストスピーカーや動画コンテンツへの出演も多数。

-Special Thanks-
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※本稿は、同主催者による外部イベント
「絶対に沈没する豪華客船の旅へ…2025」の結末において、
参加者が漂着した先が、サロン・ドゥ・エレガンティークの世界観―
すなわち《エーレ世界》であったことが明かされる演出を含んでいます。
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