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- 後編 正史 -

※重要なお知らせ

本文章の公開をもって、「後編」における正史(史実)が確定します。

 

本イベントは複数回にわたり開催されましたが、正史に位置づけられた人物・出来事については、共通の過去として扱われます。


今後のグリーティングや交流の場において話題に出ることがあり、キャラクターによる投稿や発言の中でも、本件に触れられる場合があります。​

星歴3026年 2月8日

「大赤鯨討伐作戦」決行から約三か月。

アストラヴェール帝国は先の航海での実質的な失敗をふまえ、万全の準備を整えてふたたび「大赤鯨」とまみえることを決定していました。

そして今日はついにその決行日。アストラヴェールの港町ポルトゥーラでは、先の航海で獅子奮迅の活躍を見せた軍艦「アウローラ」、アウローラに同行していた「ティベラ」が静かに時を待っています。


 

アウローラ号の前には招集された騎士たちや傭兵たち、そして志願者ら今回の作戦での乗組員が集い、アウローラ号の船長であるアドニラム・マタナル・サルムハル星波長の言葉を聞いていました。

 

「俺たちはアウローラを中心にした艦隊を結成し、ヤツ――大赤鯨の縄張りに殴りこみをかける。寝込みを叩き起こしてデカブツの首を搔っ切ってやるんだ」

 

そう、先の作戦では補給艦扱いだったアウローラ号でしたが、その大きさと耐久性、そして船長たるアドニラムの操舵能力をかわれ、今回の作戦では旗艦としての役割を与えられていました。

 

アウローラ号に乗り込むものたちも強者ぞろいです。

志願者から構成される支援部隊を率いるのは、アストラヴェール帝国の国教である星教会の「星の聖女」、ノヴァ・トレミー

星教騎士団の白騎士たちを率いる、星統騎士であるシリウス・ルーメリオン

おなじく星教騎士団の黒騎士たちを率いるのは、真星騎士であるV.サンローラン

そして傭兵や志願者たちの中でも戦闘能力のあるものを率いるのは、アストラヴェール帝国軍で星領将を務めるレオナール・ド・ノクティス

いずれも名の知れたひとかどの人物であり、この作戦へのアストラヴェールの本気具合が伺えます。

 

やがて星教騎士たちが誓いの儀式を終えると、いよいよ出発の時間となります。

ぴりりと引き締まった空気の中、アドニラム船長の相棒であるレンジ・キドの案内で、乗組員たちはアウローラ号へと乗り込んだのでした。

 


 

出航からややあって。

僚艦であるティベラ号のマクシム船長からの通信を受けたのち、アドニラム船長は改めてこの作戦の内容を乗組員たちに説明していました。

 

「作戦海域では支援船二隻と合流し、討伐作戦に移行する。作戦の肝はコイツ――」

 

船長はそう言って、アウローラの左舷へ積まれた砲を指しました。

 

「――『魔力圧縮炸裂砲 ミリオヘイラス』だ」

 

物々しい名に、乗組員たちがざわめきましたが、船長は「静かに」と声をかけて話を続けます。

 

「アウローラを含む四隻で『大赤鯨』を包囲したのち、この大砲を叩きこむ。大事なのは『ミリオヘイラス』を無事に持っていくことだ!」

 

白騎士はシリウスの指示に従って、左舷でミリオヘイラスの防衛を。

黒騎士と戦闘員たちは、サンローランとレオナールと共に砲撃及び白兵戦を担当。

それ以外の乗組員は、ノヴァと共に支援へ回る。

アドニラム船長からの指示に、乗組員たちもやや緊張した表情でうなずきます。

 

いつのまにか、雨が振り出していました。レンジからの報告に、アドニラム船長は「ただの雨か、それともヤツが近いのか……」と難しい表情です。

サンローランは「縄張りに自ら踏み込むなんて」と険しい顔で先を睨んでいます。

 

徐々に雨足が強まってきたころ、乗組員の中から声が上がりました。

 

「今、海に何か……」

 

見張り台のレンジが暗闇に目を凝らすと、オレンジ色の灯りに照らされ、アストラヴェール船籍を示す国章が見えました。

 

「支援艦の『ダンクル』と『ユルゲン』です!」

 

作戦海域への到達を示すその報告に、わっと船内が湧きました。しかし左舷にいた何人かは、「もっと近くに、何か赤いものが見えたような……」とし気な表情です。

改めて気を引き締めなおしたアドニラム船長は、「ユルゲン」のジュリエ船長、「ダンクル」のガスケ船長と通信で連絡を取り合います。ガスケ船長は先の作戦で轟沈した「アルヴォラ」の船長でもあり、アルヴォラ号の仇を討つと意気軒高な様子でした。

 

そんなとき――船体のきしむ轟音が響きます。

 

アウローラ号の後方で周囲を警戒していたティベラ号のマクシム船長から、慌てた様子の通信が入りました。

「またこちらか! アウローラ、後方だ!」

 

皆が艦の後ろへと目をやると、赤黒いウロコに巨大な体躯の威容――『大赤鯨』が、こちらへと向かってくるところでした。

激突されたらしいティベラ号は大きく船体を傾けていましたが、横転には至りません。

 

「目にハルバード……奴だ!」

 

レンジの報告に、総員に緊張が走りました。それを振り払うようにアドニラム船長が声を張り上げます。

 

「総員、戦闘態勢!」

 

降りしきる雨の中でしたが、雨音はほとんど聞こえませんでした。指示を出す声と鎧の鳴る音、そして大赤鯨の恐ろしい鳴き声がそれを打ち消してしまっていたからです。

 

大赤鯨は作戦を知ってか知らずか、まず左舷からアウローラへぶつかってくることにしたようでした。

それに気づいたノヴァが「シリウス様!」と声を上げ、白騎士たちの隣へ並び立ちます。

 

「剣よ、守護の力を!」

 

朗々としたシリウスの号令と共に白騎士隊が魔道具である剣を掲げ、いくつもの防壁を作り出してミリオヘイラスを守りました。

 

大赤鯨は攻撃を阻まれたことに気を悪くしたのか、海深くへと潜り――今度は右舷から、その鎌首をもたげて船体へ乗り上げてきます。

サンローランとレオナールが率いる白兵部隊も黙ってはいません。

 

「叩き落とす! 攻撃を止めるな!」

 

サンローランの号令と共に総攻撃を仕掛けられた大赤鯨は、たまらずまた海中へと戻っていきました。

 

数度の攻防のあと、大赤鯨はアウローラ号と並走するように左舷を泳いでいます。

それを見逃さなかったティベラ号のマクシム船長からの「大赤鯨、所定の位置へ移動するよ!」という通信を聞き、アドニラム船長が支援船三隻へと号令をかけました。

 

「拘束具、撃て!」

「――発射!」

 

支援艦三隻から拘束具が発射され、大赤鯨の体へと楔を打ち込みました。これに取り付けられたワイヤーで大赤鯨の体を固定し、ミリオヘイラスでの砲撃の隙を作る作戦です。

 

「ミリオヘイラス、射角合わせ! 魔力充填開始!」

「射角合わせ! 魔力充填!」

 

アドニラム船長からの号令にあわせ、砲の準備にかかりきりだったレンジが、真剣な面持ちでミリオヘイラスを操作しています。ミリオヘイラスは駆動音を立てながら、その砲身に取り付けられた魔力結晶を輝かせますが――そのすべてが輝くことはなく、途中で灯りは消えてしまいました。

 

「――ダメです、魔力チャージできません!」

 

やはり魔力不足か、とサンローランが声を上げました。死海の傍は自然魔力があまりに少ないため、魔道具にも不具合が起こることがあります。

「だが手はある!」サンローランはそう言いながら、シリウス、そして星の聖女ノヴァと視線を合わせてきあいました。

 

大赤鯨も黙って繋がれているわけではありません。びりびりと大気を震わせる鳴き声のあと、真っ赤な目がぎろりとアウローラ号をねめつけます。

 

「攻撃が来ます! 守りを!」

シリウスの声とともに白騎士がまた防壁を築き、ミリオヘイラスを守ります。しかしその衝撃で動きを止めていた拘束具が外れ、大赤鯨はアウローラ号の前方へと位置取りを変えてしまいました。

 

「何か仕掛けてくるよ!」

マクシム船長からの通信に、はっとしたアドニラム船長が「回避!」と叫びながら大きく舵をとりました。見れば、大赤鯨が体を上空へ跳ね上げ、こちらへと跳んでくるではありませんか。

ぶつかる! 誰もがそう思いましたが、なんとか船長の操舵が間に合い、大赤鯨は左舷すれすれをかすめてまた海中へと沈んでいきました。

 

大立ち回りで流石に少し疲れたのか、また大赤鯨が拘束具の射程範囲内に入りました。再度拘束具が発射され、大赤鯨の動きを止めます。

 

大赤鯨も負けずに大暴れをしますが、ミリオヘイラスはまだ魔力の充填が済んでいません。「拘束具がもたない」と焦った様子の通信が入ったのを聞き、シリウスが一歩進み出ました。

 

「魔道具からの魔力供給を行いましょう!」

ノヴァが「アストラヴェールの魔道具からならできるはず」とそれにき、「力をお貸しください!」と騎士たちへ声を掛けます。それもそのはず、星教騎士たちに支給される剣はすべてアストラヴェール製の魔道具であり、豊富な魔力を蓄えているはずでした。

 

「騎士たちは剣を抜いて砲の周りへ!」

サンローランの号令も手伝い、星教騎士たちがずらりとミリオヘイラスの周囲へ並びました。

 

それを見たアドニラム船長が、ふたたびレンジへ号令を飛ばします。

「ミリオヘイラス、射角合わせ! 魔力充填開始!」

「魔力充填開始!」

レンジの操作にあわせ、ミリオヘイラスに取り付けられた魔力結晶が再び輝きます。

 

「総員、剣を掲げてください!」

シリウスの号令とともに騎士たちが剣を掲げると、暖かい魔力の輝きが周囲に満ちました。

「皆さまの魔力を、私が砲へ送ります……!」

ノヴァの声が響き、ミリオヘイラスの魔力結晶はどんどんその輝きを増し――ついにそのすべてに光が灯りました。

 

「魔力充填……超過!」

レンジの声に被るように、「拘束が外れる!」というガスケ船長からの通信が鳴り響きます。見れば、拘束を振り切った大赤鯨がこちらへ向かってくるところでした。

 

「ミリオヘイラス、撃て!」

 

空気を圧縮するようなぎゅうんという音とともに、皆の視界が真っ白になりました。

乗組員の一人は自分の目がおかしくなったのかと何度も瞬きをしましたが、それはミリオヘイラスの炸裂による魔力光だったのです。

 

やがてそれが収まってくると――崩れ落ちるように海へと沈んでいく。大赤鯨の姿が見えました。

 

「やったか!?」

「まだ終わっていない。剣を構えろ!」

 

サンローランの叫びと共に、大赤鯨は最後の力を振り絞って再びアウローラ号へ乗り上げてきました。逃げ遅れたノヴァをシリウスが防壁を張って守りますが、大赤鯨の重さすべてを跳ね返すことはできません。ノヴァとシリウスがなんとか退避したあと、白兵戦を得意とする者たちが総攻撃を仕掛けます。

 

しかし大赤鯨は狂ったように暴れ、手が付けられません。とどめの一撃を喰らわせなければならない、誰もがそう思ったとき、レオナールが大声をあげました。

 

「総員下がれ! 動きを止める!」

 

レオナールの剣――銘はなんと言ったでしょうか、赤く脈打つ長刀が稲妻をたたえてばちばちと鳴りました。裂の気合いと共に斬撃が放たれ、大赤鯨が大きくのけぞります。

 

「サンローラン、やれ!」

「言われずとも!」

 

見上げると、サンローランが一段高い場所で大剣を構えているところです。ミリオヘイラスの一撃によるものか、いつの間にか雨雲は晴れ、サンローランの体躯ほどもあろうかという巨大な剣が月明りをたたえて淡く光っていました。

 

「……満月よ、見ていてください」

 

戦いの場にはいっそ不釣り合いなほど静かなきのあと、サンローランは大きく跳躍し、巨大な剣と共に一回転。大赤鯨の首筋に、その大剣を深々と突き刺しました。

 

絶叫と血飛沫。

大赤鯨は海へと落ち、ぷかりと腹を見せて浮かんできました。

 

「今度こそやったか……?」

アドニラム船長が、恐る恐るといったふうに覗き込みます。

大赤鯨は今度こそ動きません。あれだけ暴れ、いくつも船を沈めた怪物でしたが、もう二度と動くことはありませんでした。

 

わあ、と歓声が上がりました。喜び合い称えあう人々の中、ノヴァの率いる支援隊は負傷者や船への損害の確認をしています。

 

ばす、ばす、という音がしました。ユルゲン号とティベラ号が、大赤鯨の巨大な死体に銛を打ち込む音です。二隻はこれを使い、大赤鯨をフォグ・コーストまで運んでいかなくてはなりません。

 

「大変な威力の兵器でしたね」

守り切ったミリオヘイラスを眺め、シリウスがそう言いました。ミリオヘイラスは赤黒い煙をその砲身から吐き出し続けています。レオナールはあまり興味がなさそうにしていましたが、ふと思い出したようにつぶやきました。

「五年前は我々に向けられていた兵器が、今や英雄扱いか」

 

五年前、兵器――それを聞いていた人々の脳裏にとある亡国の名が浮かびましたが、誰も口にはしません。

 

損害の確認をしていたノヴァは、ふと気づいたように顔を上げました。

「星の声が聞こえます……シリウス、ポラス、アヴァルタル。それに、月」

晴れ渡る空には、彼女の言う通り四つの星が煌々と輝いています。

「見守っていてくれたのですね」と祈る聖女の背中に、数人のアストラヴェール人が同じく祈りを捧げました。

 

帰路をともにするダンクル号のガスケ船長から、健闘を称える通信が入りました。

「我々は、今日のことを決して忘れないだろう! それではな!」

二度の航海を共にしたガスケ船長の言葉に、アドニラム船長も「ありがとうございました」ときます。

 

「アンタらの健闘にも改めて礼を言う。ありがとう!」

 

アドニラム船長は乗組員たちの顔を改めて眺めました。

騎士、傭兵、聖職者や商人――中には学生や異世界人も混ざっていたかもしれません。先の討伐へ同行したものも、今回の依頼から初めて参加したものも、一様によい表情をしています。

 

「この中の誰が欠けても、ヤツを打ち倒すことはできなかっただろう。アンタらと一緒に戦えて、嬉しかったぜ!」

 

アドニラム船長のその言葉に、見張り台へ戻ったレンジもうんうんと頷きます。

船長の傍にいたシリウスも、それに頷いて言いました。

 

「本当にお疲れ様でした。皆さんがアストラヴェールの、この海の平和を守ったのです」

 

レオナールの勇ましい声が、それに続きます。

「この海で示した勇気と働きは、立場や出自を越え、ここに集った者すべてが誇っていいものだ。我々は、この勝利と共に帰還する!」

 

「ご苦労だった。参戦したものは皆、誇りを持つといい」

はじめは皆と同じように乗組員たちを慰労したサンローランでしたが、ふと目を伏せてこう続けました。

 

「これが――この先に待つ災いの、前触れではないことを祈る」

 

しん、と静まり返った乗組員たちを見て、ノヴァが慌てたように声を上げます。

「とにかく! 今はちゃんと帰って、お腹いっぱい食べて、しっかり眠りましょう!

 皆さま、本当にお疲れ様でした。星々のご加護がありますように!」

 

その様子にアドニラム船長は少し笑って、東の空からのぼりつつある朝日に目を細めました。アウローラ号はゆっくりとポルトゥーラへ入港し、慣れ親しんだ潮風に身を任せます。朝日の橙色を反射して、あれほど恐ろしかった海がきらきらと輝いていました。

 

「これにて大赤鯨討伐作戦は完了だ。改めて、すべての乗員に感謝する!」

 

こうして、アストラヴェール海軍、領主軍、星教騎士団の合同作戦「大赤鯨討伐作戦」は成功をおさめました。

 

FIMSの職員たちは慌ただしく聞き取りや、船に付着したサンプルの回収を急いでいます。

何故このような災害が起きたのか。何故大赤鯨のような巨大なガント種が、アストラヴェール近海に出現したのか。

戦いは終わりましたが、判明していないことはいくつもあります。

 

しかし、今はただ――皆の健闘を称えましょう!

―グランドクエスト 大赤鯨を討伐せよ 終

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